「やさしい日本語」の作り方

ここでは、どうやったら「やんしす」を使って「やさしい日本語」が書けるのかについて簡単に解説します。「やさしい日本語」の作り方についてのより詳しい説明については、 「やさしい日本語」ホームページを参照してください。

もとの日本語文を用意する

「やさしい日本語」を書くということは、外国人を含む不特定多数の人たちに連絡したい内容があるはずです。まずそれを用意しましょう。個々では例として、次のような文を考えてみます。

照明のスイッチをつけたり消したり繰り返すと、漏れているガスに引火する場合があります。

これは地震の後でガス漏れに警戒するようにという呼びかけですね。

「やんしす」を使ってみる

上の文を「やんしす」に入力して評価してみましょう。すると、次のような結果が出力されます。

分析結果
(1):照明  スイッチ  つけたり  消したり  繰り返すと、  漏れている  ガスに  引火する  場合が  あります。
評価ポイント
文(1)
照明: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
スイッチ: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
繰り返す: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
漏れ: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
引火: ほとんど理解してもらえません。可能なら簡単な単語に置き換えてください。
文が長すぎます(45拍)。文を分割してください。
 「~したり」は避け、具体的に「~をしてください」のように書きましょう。
 「~したり」は避け、具体的に「~をしてください」のように書きましょう。

「分析結果」のところには、入力した文の単語ごとの難しさが色で表示されます。青は使っても大丈夫な単語、ピンクは「難しいので初級者には理解されない可能性が高い」単語、赤は理解しにくい難しい単語です。これらのレベルは、日本語能力検定試験の級に基づいて判定されていますので、日本語学校などで日本語教育を受けた外国人ならば、ほぼこの理解度に沿っていると考えてよいでしょう。「やんしす」では、日本語能力検定の4級・3級の単語を青で、2級・1級の単語をピンクで、それ以外の単語(固有名詞を除く)を赤で表示しています。

「評価ポイント」のところには、赤とピンクで表示された単語についての説明、および文全体についてのアドバイスが表示されます。ここでは「文が長すぎる」という警告が出ています。また、第2文では「~たり」についての警告が出ています。

分析結果の読み方

「やんしす」は、入力された文を自動的に解析し、機械的にアドバイスを出力します。そのため、文の解析を間違うこともありますし、出力されるアドバイスが必ずしも正しいとは限りません。例えば上記の例で、「~したり」についての警告が出ていますが、これは「車を停めたりして様子を見てください。」のように、指示の文に「~したり」が入っている場合の警告です。なので、いま書いている文に関してアドバイスが当てはまらないと思ったら、無視してもかまいません。

次は何をすればいいのか

いちおう目標は警告が出なくなることなので、赤やピンクで表示されている単語を簡単な単語に置き換えればよさそうに思えます。しかし、長い文の場合、単に単語を置き換えるだけではうまく「やさしい日本語」にならないことがほとんどです。

まず文を短くする

やることはいろいろあるのですが、まずすべきことは文を短く切ることです。「文が長すぎる」という警告が出ていますので、文を前半と後半に区切ってみましょう。この文でいいたいことは「照明のスイッチをいじるな」ということなので、

照明のスイッチをつけたり消したりしないでください。
漏れているガスに引火する場合があります。

としてみてください。とりあえず「文が長すぎる」という警告は消えました。

単語を置き換える

1番目の文では「照明」と「スイッチ」がピンク色になっています。「照明」は「電気」と言い換えてもよさそうですが、「スイッチ」を別の言葉に言い換えるのは難しそうです。ここでは「照明のスイッチ」をまとめて「電気」で置き換えてしまって

電気をつけたり消したりしないでください。

としてみましょう。これで単語に関する警告は消えました。「~したり」についての警告と、「~ないでください」についての警告が出ていますが、前者はこの文には当てはまらないので無視してかまいません。後者は、「~してください」にすることが可能ならばそうしたほうが良い、というアドバイスですが、この文の場合にはそれはできないので、これも無視してかまいません。

文の形を変える

次に2番目の文ですが、「漏れる」を簡単な言葉に置き換えるのは難しそうです。そもそも、電気のスイッチに触らないでもらえばいいことなので、「漏れているガス」とか「ガスが漏れていたら」のような言い方をする必要はないかもしれません。単に「ガスに火がつくぞ」という警告ができればいいわけです。そこで、

ガスに引火する場合があります。

としてみます。次に「引火」が難しいので、「火がつく」としてみましょう。

ガスに火がつく場合があります。

これで文についての警告は消えるのですが、元の文にあった「火がつくと危ないから注意しろ」という雰囲気がない感じがします。そこで、

ガスに火がついたら大変です。

とすると、読んでいる人に警告している感じが出ます。「~たら大変です」という言い方は、やさしい日本語では警告の意味として頻繁に使われます。
最終的に

照明のスイッチをつけたり消したり繰り返すと、漏れているガスに引火する場合があります。

という文が

電気をつけたり消したりしないでください。
ガスに火がついたら大変です。

となりました。

作成済みテキストへの追加

ある程度警告の少ない文が作れた時点で、[追加]ボタンを押すと、「作成済みテキスト」欄にいま作った文が移動します。作った文をこの欄に溜めておいて、最後に[ファイル]→[名前をつけて保存] を選ぶと、この内容をテキストファイルとして書き出すことができます。